尾鉄廃線跡を歩く1


 近頃、廃線跡歩きが趣味として確立しているようだ。私も尾小屋鉄道HPの管理人としては、一度尾鉄の廃線跡を歩かなくては...と考えていた。そして平成10年8月14日、お盆の帰省期間を利用して廃線跡を歩くことしした。8月と言えども北陸地方は未だ梅雨明けしておらず、私が帰省していた一週間のうちで、雨が降らなかったのはこの日だけであった。

 金沢駅より電車で小松に入り、13:15発尾小屋行きのバスに乗ろうという予定である。小松駅の売店で500mlペットボトルのウーロン茶を買い、バスに乗り込んだ。尾小屋までは約45分間のバスの旅、料金は820円である。車内では数十年振りに東京から墓参りにきたおじさんや、土地のおばあさんの会話で賑やかである。「私の家な、な〜ん、尾小屋の駅から歩いて7分程の所ねんわ」。久々に聞く北陸の方言、また「駅」という言葉が未だ現役かと思うと嬉しくなった。結局、終点の尾小屋まで乗ったのは私と先程のおばあさんの2人だけ。今や尾小屋の家も26〜27軒と言う。とてもこの町に、以前は5,000人以上の人が住んでいたとは思えない現状である。

 バスを降りて、以前駅舎があった辺りの写真を撮る。先程のおばあさんが「機関車の写真を撮っとるがけ?」と聞いてきた。「はい」とだけ答えると、おばあさんは笑顔で去っていった。このおばあさんも、まさか私が小松まで歩く気だとは思うまい...と思いながら、ぐるりと駅の敷地のあった場所へと移動した。

 旧尾小屋駅跡は草が繁り、もはや荒れ放題である。屋根の下にはキハ3。客車、機関車の3輛が保存されているが、囲いのフェンスも朽ちてボロボロである。キハ3の中に入ると、車内は埃まみれであった。敷地の中にはDC122機関車も野ざらしで放置されているが、これはひどい状況である。他には車庫の裏手にターンテーブルの遺構もある。そして車庫の中にはキハ2がいるのだが、ロックされていて中は見えない。尾小屋駅で一通りの写真を撮り、14:10頃廃線歩きの旅を始めた。この時は漠然と「5時くらいに小松に着けたら御の字だなぁ」なんて思っていたのだが、あるいているうちに、自分の無計画ぶりが露呈してくるのであった...。

 

ターンテーブルの遺構

尾小屋駅跡の全景


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