尾鉄廃線跡を歩く3


倉谷口〜観音下(2.0キロ)

 倉谷口の駅があの通り薮に覆われていたので、当然のごとく線路の跡を歩くのは断念した。反対の長原方向にも歩けそうにもなく、断念した。もと来た橋を渡り、再び国道を歩くことにした。国道に沿って歩く。右手には郷谷川、その向こうが廃線跡である。

 しばらく行くと廃線側に渡れる橋があらわれる。「熊が出没します」と看板があるが、知った事では無い。気にせず渡ると、目の前に明らかな線路跡が現れる。「おお!」と笑顔になった。ここからが本当の廃線跡歩きである。倉谷口方向にも線路跡は延びていたが、ここでは「時は金なり」なので省略した。行っても、行き止まりであると知っていたからでもあるのだが...。またいつか歩こうと思う。

 

 線路跡は轍になっており、ところどころタイヤの跡もある。どうやら林道になっている様子だ。しかし、林の中を抜け、川に沿って歩く気分は爽快である。まさに気分はキハ3!(笑)そのまましばらく歩くと、小さな鉄橋が現れた。木と木の間にテープがはってあり、どうやら「渡るな」という意味らしい。しかしここで引き返すのも億劫なので、そのまま渡ってしまった。小さな鉄橋とはいえ、苔むしていて、鉄も腐っているかもしれないので、足取りは一歩一歩、慎重に歩いて渡った。

 さて、鉄橋を渡って少し歩くとトンネルが見えてくる。そしてトンネルの少し手前には、尾小屋から3キロを示すキロポストがある。「これが本に載ってたキロポストかぁ」と感心すると同時に「まだ尾小屋から3キロしか歩いてないんかぁ...。全部で17キロもあんのに...」とガッカリもした。

 さて、いよいよトンネルに入る。昼間で、向こうが見えているとはいえ、薄暗く不気味である。しかもポータルから水がしたたってきて、足下はぬかるんでいる。水が落ちてくるタイミングを避け、意を決してトンネルに足を踏み込むと、いきなり靴の半分がぬかるみに埋まってしまった。「う、最悪やぁ!」、靴は泥で汚れ、しかも湿ってしまった。

 トンネルの中は素掘りで、ゴツゴツしていた。写真ではストロボをたいたので明るく見えるが、実際は薄暗く、なかなかスリリングである。しかも、全体にぬかるんでおり、足場は決してよくない。出口に近付く頃には、白いズボンも靴も、どろどろであった。廃線歩きをする時は、濃い色のズボンと靴がオススメです(笑)しかし、出口付近には、他に何人もの足跡が残っていた。同じ趣味の輩がいると思うと、少し気恥ずかしくなった。

 トンネルを抜けると、ちょっとした小川があり、それをまたいで越える。そこからしばらくは、林の中を歩く事になる。それがまた、森林鉄道風のムードで良い感じである。気分はキハ1だ(笑)。林を抜け、田んぼの中の農道に出ると、観音下の集落はすぐそこだ。あとから思うと、この区間が一番「濃い」楽しい区間であった。

 集落に入ると商店で蒸しパンとアイスを買った。良く考えたら、朝から何も食べていなかったのだ。観音下の集落を少しブラつく。トラックのおっちゃんが不審そうな目で見ている。そりゃ、ドロドロの足に大きなカメラを下げたヤツが歩いていたら誰でも不審だろう...と自分であきれてしまった。さて、元のルートに引き返し、集落の中心に向かうと、そこが観音下の駅の跡だ。


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